住宅ローン減税 確定申告の手引き/適用条件
コロナショックで住宅ローン減税の「入居期限要件」が弾力化されます
2019年10月からの消費税率引き上げに伴い、住宅ローン減税の延長・拡充が図られました(2019年度税制改正)。税率10%が課された住宅を新築・取得あるいは増改築した場合、控除期間が10年から3年間延長されて合計13年間になりました。計算上、受け取れる還付金が増える仕組みです。消費増税の前後における駆け込みとその反動減を平準化し、景気変動を安定させるべく税制措置が講じられました。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、適用条件のさらなる緩和がなされています。やむを得ず住宅ローン減税の入居期限要件を満たせない場合、代わりの要件を満たすことで期限内に入居したのと同様の減税措置が適用されることとなりました。制度を弾力化することで、適用除外者をなくそうという考えです。下記の【関連サイト】をご参照ください。
【関連サイト】
- 住宅ローン減税の適用要件弾力化措置の詳細 (国土交通省)
住宅ローン減税の適用条件
それでは、ここから住宅ローン減税の適用条件を見ていきましょう。
- 自ら居住するための住宅であること(投資用やセカンドハウスは不可)
- 建物の取得を伴わない土地だけの取得は対象にならない
- 住宅の床面積が「登記簿面積」で50平方メートル以上あること。その際、メゾネットタイプのような階数が2以上あるマンションの場合は、全フロアの延べ床面積を起算とする。
- なお、「消費税率10%が課税された住宅」かつ「合計所得金額が1000万円以下」の場合に限り、住宅の床面積が「40平方メートル以上」に緩和される(2021年度税制改正)
- 上記床面積の2分の1以上が専ら自己の居住の用に供されること
住宅ローン減税の創設目的はマイホーム取得の促進です。マイホームは高額な買い物となるだけに、国策として税制上のインセンティブを付与することで、誰もが無理なく持ち家を手にできるよう支援する狙いがあります。
と同時に良質な建物が新築されるよう、居住水準の向上も視野に入れています。投資用のマンションやセカンドハウスが適用対象外なのは、「持ち家」=「自らが主たる生活の本拠として住むための家」という考え方に合致しないからです。これまで「床面積要件を50平方メートル以上」と定めていたのは、狭小住宅の建設に一定の歯止めを掛けたかったからです。健康で文化的な住生活が営めるよう、必要不可欠な居住水準としての最低床面積を確保しようという狙いがありました。
これが2021年度税制改正で緩和されました。子供なし夫婦や核家族化など、家族構成の変化に順応した制度に改めるべく、一定条件のもと、床面積要件が「40平方メートル以上」に緩和されました。
- 配偶者(婚約者を含む)や同居の親族から購入した住宅でないこと
- 贈与により取得した住宅でないこと
- 相続により取得した住宅でもないこと
- 給与所得者が使用者(会社)から使用人である地位に基づいて時価の2分の1未満の価格で譲り受けた住宅でないこと
- 適用を受ける年分の合計所得金額が3000万円以下(※)であること
(※)住宅の床面積が「40平方メートル以上 50平方メートル未満」の場合、合計所得金額が1000万円以下であること
住宅ローン減税はマイホームの取得を後押ししようとするわけですが、その一方、周辺相場に比べて著しく有利な価格条件でマイホームを取得しても、税還付は認められなくなっています。他力本願に対して、国は支援の手を差し伸べないのです。のちに贈与税や相続税を支払わなければならないのだから、必ずしも有利な取引とはいえない面はありますが、法制上、認められません。
また、高額所得者も同様の扱いです。3000万円超の年間所得がある人にまでインセンティブは不要との考えなのでしょう。親からマイホームを生前贈与される金持ち一家の子息や高額所得者にまで税額控除を認める必要はないとの判断です。
- 償還期間が10年以上の借入金を有すること
- 借入先が会社(社内融資)の場合、融資金利が年率0.2%以上であること
- 確定申告者が「非居住者」の場合、住宅を2016年4月1日以降に取得していること
- 取得後6カ月以内に入居し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいること
- 対象となる住宅が長期優良住宅あるいは低炭素住宅の場合、認定長期優良住宅あるいは認定低炭素住宅であると証明されたものであること
「償還期間が10年以上の借入金」に会社からの社内融資は含まれますが、親族や知人からの借入金は含まれません。また、当初は10年以上の融資期間で借り入れていても、繰り上げ返済(期間短縮型)により融資期間が10年未満に短縮されると、それ以降、たとえ控除期間が残っていても税還付が受けられなくなる可能性があります。ご注意ください。
また、「確定申告者が非居住者」とは、イメージとして長期間にわたる海外転勤を想像してください。非居住者とは一定期間、国内に居住していない者を指します。要は、海外で暮らす日本人です。2016年度に税制改正があった関係で「住宅を2016年4月1日以降に取得していること」という条件が具備されました。
それまで(税制改正前)海外転勤者は冷遇されていました。海外転勤してしまうと、その間、住宅ローン減税が適用されなくなってしまったのです。政府は日本経済がグローバル化する中で、時代の流れを覚知したのでしょう。16年度の税制改正により「非居住者」と「居住者」の区別をなくしました。その結果、たとえばアメリカに海外赴任中、東京の新築マンションを帰国後に自分で住むために購入しても、帰国後、確定申告すれば住宅ローン減税が適用されるようになりました。とても稀有なケースとは思いますが、該当者にとっては朗報といえます。
「取得後6カ月以内に入居し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいること」―― 何も気にしなければ、サラッと読み飛ばしてしまいそうですが、「各年」という2文字に注意してください。
住宅ローン減税の控除期間は最長13年です。この13年の間、「毎年」=「各年」の12月31日に生活の本拠が自宅にあるか否かでローン減税の適否が決まります。たとえば、適用3年目~5年目の2年間、家族全員で転勤してしまい、各年の年末は留守だったとします。すると、その2年間は「12月31日まで引き続き住んでいること」を満たせないため、住宅ローン減税は適用されません。しかし、6年目に転勤から戻ってくれば、再び受け取れるようになります。12月31日に住んでいるか否かが重要な分かれ目となるのです。特に転勤族の人は、ご注意ください。
中古住宅を購入した場合に追加される適用条件
中古住宅を購入した場合、上述した新築住宅の適用条件に加えて「築後年数の条件を満たす」あるいは「耐震基準に適合していることの証明」が求められます。
中古住宅を購入した場合の追加の適用条件
- マンションなどの耐火建築物では、取得日時点で築25年以内であること
- 木造住宅などの非耐火建築物では、取得日時点で築20年以内であること
- 売り主によって「耐震基準に適合していることが証明された建物」であれば、築年数は問わない
- 2014年4月1日以降に取得した中古住宅を買い主が耐震リフォームし、その結果、「耐震基準に適合していることが証明された建物」も築年数は問わない
耐火建築物とは、建物の主たる部分の構成材料が「石造り」「れんが造り」「コンクリートブロック造り」「鉄骨造り」「鉄筋コンクリート造り」「鉄骨鉄筋コンクリート造り」いずれかのものをいいます。細かいですが「軽量鉄骨造り」は耐火建築物に該当しませんので、ご注意ください。
また、「耐震基準に適合していることが証明された建物」とは、具体的に次の(1)(2)(3)いずれかの建物になります。
耐震基準に適合していることが証明された建物
- 耐震基準適合証明書による証明のための調査が終了した建物
- 既存住宅売買瑕疵担保責任保険の契約が締結されている建物
- 建設住宅性能評価書により、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が「等級1」「等級2」または「等級3」であると評価された建物
2014年度税制改正によって、中古住宅の適用条件が緩和されました。改正前は中古住宅の「売り主」が建築士や指定確認検査機関、あるいは指定住宅性能評価機関に依頼し、耐震基準を満たすことの証明書を取得した場合に限り住宅ローン減税が適用されました。要は、証明書を取得できるのは中古住宅の売り主だけだったのです。
それが、改正後は中古住宅の「買い主」が売買契約締結・引渡し後に耐震リフォームを行い、入居までに「耐震基準に適合していることが証明された建物」へと改修できれば、築年数にかかわらず住宅ローン減税が受けられるようになりました。2014年4月1日以降に取得した中古住宅から適用されます。
こうした税制改正に込められた思いは、住宅ローン減税を通じて耐震性能を有する建物を増やしたい ―― 巨大地震の切迫性が高まるなか、建物の倒壊によって人々の生命や財産が脅かされないよう、シェルターとしての機能を住宅に供与したい考えです。阪神淡路大震災(1995年)では建物の倒壊や家具の転倒により、多くの人が窒息死や圧死でこの世を去りました。同じ悲劇を繰り返さないためにも、住宅ローン減税がその一助になることを願うばかりです。
【関連サイト】
- 一般住宅の新築あるいは購入した場合 (国税庁)
- 中古住宅を取得した場合の住宅ローン減税(国税庁)