営業マンは来場客をどのように見ているのか?
住宅購入に関心のある本サイトをご覧の皆さまは、何度かモデルルームや住宅展示場に足を運んだことがあると思います。どのようなマンションなのかとても興味があって、入ってみたいとは思うものの、いざ入ろうとすると緊張してしまい、意外と入りにくかった経験をお持ちではないでしょうか。
その原因として考えられるのが、最初にアンケートカードへの記入を求められ、見学中は営業マンに付きまとわれ、「モデルルーム見学は何件目ですか」「ご予算はどのくらいですか」「勤務先はどちらですか」、さらに「お住いになる人数は?」「建物の現地(工事現場)はご覧になりましたか」等々―― 販売員から“質問攻め”されることへの嫌悪感が一因として挙げられます。
数日後には営業担当者から「どうでしたか?」と購入意欲を確かめる電話が掛かってきて、あいまいな返答をしていると、ついには自宅にまで来訪。そして、間髪入れず「ここに実印を押してください」と、強引に契約させられてしまうのではないかという不安が脳裏をよぎります。防衛本能による危険回避の心理がモデルルームの敷居を高くしているのです。
では、一体どうして営業マンは“釣った魚は逃がさない”とばかりに営業攻撃を続けるのでしょうか。私の営業マン時代を振り返ると、しつこくなってしまう原因として以下の2つの理由が思い返されます。
- 最初が肝心で、初回接客でその気にさせようとするため
- 買う可能性があるのかどうかを判断するための情報を得ようとするため
マイホームの購入適齢期である30歳代~40歳代は未就学児がいたり、共働きの場合も少なくありません。そのため、時間的にモデルルームに再来場してもらうのは容易でなく、後日、改めて会えるチャンスが限られるため、一期一会とばかりに物件をセールスするのです。同時に、営業マン自身も売り込もうとします。
さらに見学客に購入意欲がどれくらいあるのか、次のような4段階のランク分けも行います。比率としては、(A)10%、(B)10%、(C)30%、(D)50%ぐらいです。見学客へ質問攻めしてしまうのは、ランク分けに必要な顧客情報を入手したいが故です。参考までに、私が当時、販売した新築マンションでは、全来場者のうち実際に契約に至る(契約歩留まり)のは15%ぐらいでした。たとえば来場者が1000人だったとすると、その15%に相当する150戸が契約に至る計算です。
(A)その物件を買う気で見に来た人………本来のお客様
(B)どこかの物件を買う気で来た人………ボーダーラインのお客様
(C)買いたいという気持ちはあるが、今すぐではないし、具体的な検討物件もない
(D)完全な冷やかし、資金面で手が届かない、条件に合わず説得も不可
このランク付けに従い、営業マンはどうやって契約に結びつけるか作戦を練ります。モデルルーム見学後、何の連絡もなければ「脈なし」と判断されたか、あるいは、かなり怠慢な営業マンといえます。連絡の頻度によって、自身(来場客)がどのランクに振り分けられたかが想像できるのです。
補足すれば、(A)はどの営業マンが接客しても契約に結びつく優良顧客です。(B)(C)がボーダーラインの見込み客で、たとえば抽選物件であれば「抽選を優遇する」(他の客に対し、優遇者が購入を希望している住戸に抽選の申し込みをしないよう誘導する)とか「価格を値引く」とか、販売戦略上のインセンティブを用意して購入意欲をかき立てます。当然ながら、営業マンとの強固な人間関係があっての話です。ボーダーの(B)(C)客を落とせるかどうかが営業マンの実力の差となって表れます。
よい営業マンの見極め方
では、どうすれば親身になって寄り添ってくれる顧客本位の営業マンに巡り合えるか?―― 理想の営業マン像を列記したのが次の10項目です。
理想の営業マンとは?
- 顧客の立場に立って一緒に考えてくれる
- 長所のみならず短所も隠さず説明してくれる
- 周辺の競合物件を熟知しており、決して悪口を言わない
- 専門用語を使わず、わかりやすい説明をする
- 訪問するときは、必ずアポイントを取る
- 売り込みの気持ちがギラギラとした態度を取らない
- 顧客の質問には全部正確に答える
- 部屋を押さえる(仮申し込み)ことを強要しない
- 身だしなみがしっかりしている(清潔感が大事)
- 「理想」と「現実」とのギャップを埋めてくれる
不動産の営業は「毎月、何件契約して“なんぼ”」の世界です。歩合給では1件の契約が給料にまともに影響するため、社内で同じ顧客を奪い合うという現象すら見受けられます。「捕まえた獲物は逃がさない」とばかりに付きまとわれたら、たまったものではありません。
また、今度は対照的にハウジングアドバイザーと称して、モデル案内や商談をする女性がいます。彼女たちはパートや派遣の場合が多く、売れようが売れまいが本人の給料には関係しません。従って、追客することはなく、専門的な質問をされても返答に窮するのが日常です。“時給”で仕事しているため、不動産の知識を増やそうとか、帰宅後に自宅から電話フォローしようとか、自発的な営業活動はしません。もちろん一生懸命な女性もいますが、これもまた事実なのです。そこで、上記の10項目を頭に入れ、営業マンにこんな質問をしてみましょう。
■ノルマはきついか。給料形態は「固定給制」か「歩合給制」か?
スマートな営業になるか、ハングリーな営業になるかが想像できる。
■今までどういうクレームが多かったか、その対処方法は?
顧客の不満点がわかると同時に、その営業マンの正直さもわかる。
■平日の昼間は何をしているか?
新規立ち上げの場合を除いて、平日に販売センターへ足を運ぶ見学客は少ない。つまり、空いた時間をどのように過ごしているかで、各人の営業姿勢や販売への熱意が分かる。ライバル物件の調査やチラシ巻き(ポスティング)、また、見込み客の追客状況を各販売担当者からヒアリング・情報共有するなどの活動が望ましい。顧客訪問を装って、パチンコ屋に行っていたり、車の中で昼寝しているのは言語道断。
■宅建(宅地建物取引士)の資格を持っているか?
有資格者が多ければ、会社としての教育レベルの高さがわかり、その本人のキャリアもわかる。
■契約締結後も丁寧に応対するかどうか?
本人の営業成績にカウントされるのは一般的に契約時が多く、営業マンは自分の成績になってしまえば契約後は顧客をホッタラカシにする傾向がある。そこで成績に影響しなくなっても、きちんと対応するか確認する。
相互の信頼関係が重要
営業マンと良好な関係を築くには顧客側の努力も不可欠です。いくら仕事だからといっても営業マンも人の子です。好き嫌いはあるし、年齢や性別による相性の不一致もあります。物件が気に入っていれば、なおさら担当者とは仲良くすべきです。こうした姿勢が結果として、自身にプラスとなるのは言うまでもありません。見込み客ランキングの(C)(D)に分類されないためにも、以下の7点を心がけてください。
営業マンと接する際の心得7カ条
- 購入動機や物件の希望を明確にしておく
- 資金(年収や頭金)に関しては見栄を張らずに正確に伝える
- 本当に購入したいという意欲・真剣さを見せる
- 不安な点や疑問点は積極的に質問する
- 気に入った点・気に入らなかった点を正直に話す
- マナー違反をせず、感じよく行動する
- 知ったかぶり、冷やかし、営業マンを見下す行為は厳禁
以上の観点で営業マンと接すると、これまで見えなかったものが見えてくるのではないでしょうか。モデルルーム見学は決して怖くありません。営業マンと仲良くなれば、有益な情報を提供してくれます。いろいろな相談・わがままにも親切に乗ってくれます。営業マンを味方にするためにも、正しく付き合うことが重要です。